木材を接着剤で縦横に貼り付けて強度を増した集成材「CLT」による木造建築があおられている。言い分としては「日本の余った間伐材をうまく利用できる」「従来の在来工法ではできない建築デザインが可能」たしかに外に突き出て柱もないような……建築家が好きそうなデザインはできるようだ。
Canadian CLT Handbook, 2019 Edition. Volume I
- 作者:Karacabeyli, Erol,Gagnon, Sylvain
- 発売日: 2020/02/19
- メディア: ペーパーバック
また、CLTをあおるにあたって「水ガラスによるコーティングで耐火性まで上げた」とやるわけだ。これに大部分の人はひっかかってしまった。テレビで「よさげ」「希望の光」みたいにあおる。
テレビ局のドキュメンタリーや、ビジネス紹介番組ほど「注意してみないと、ひっかかる」ものはない。私は常に「え?本当にだいじょうぶかな?」「絶対言わない問題点があるよね」と思ってみている。
あとで、実際に現地や、実物に触れると「あ、やっぱウソあるよね」がすぐ露呈する。
残念だけど……そういうものだ。
なので、CLTも検討してみた。知人の建築士(2級、国立大学工学部建築学科卒)もCLT推進が叫ばれるし、自分も興味あってサンプル評価や検討もしたが「やっぱむずいかな」になったそうだ。
彼がNGポイントにしたのは「耐火性能」「防水性能」のキモとなっていた「水ガラス塗装によるコーティング」が「意外にも弱かった」ということであった。
テレビ番組では、水ガラスコーティングをCLTに行い「燃えにくい」とアピールしていた。
CLTはボンドで貼り付けた集成材だ。こうやってつくる。
だからそのままでは雨や湿気に弱い。なので外装材としては不適だと言われている。それを克服するためにガラス塗料によるコーティングを行えば野外向けの素材に使えると……だが……
そのガラスコーティングをいくらしても、木材は「端の断面」が微小な「パイプの集合」となっている。経年で木は呼吸し伸縮をするのでいやおうなしにCLTであろうと「部分的なひび割れ、裂け」が生じる。そこから水分が入り込み水ガラスコーティングも「無力化」されてしまうというのだ。結果としていくら水ガラスコーティングなどをしてもCLT素材は水分での劣化は否めない。
なので、内装材などに使うならいいが、家全体の構築には使えない。となると……CLTはコストも高いので結果として従来の無垢材などでの建築で十分……となる。
科学者の思い付き、試みでも数千年の住宅建築のノウハウにはなかなか勝てない……ということなんだ。古代から江戸までの宮大工らの知恵、ノウハウ……決しておろそかにしてはならない。