DIYでクルマの塗装をするはめになったので、塗装テクニックを勉強……というか「開発」している。
「塗装」というのは、建築やリフォームでも「難易度の高い」ポイントである。ほんと難しい。車の塗装なんかまさにそうで、メカニックでも塗装は別途プロに頼む。
自分の場合「いかにお金をかけず、高パフォーマンスを出すか」が目標なので、そう、世間の人、プロみたいに「機材に金をかけ」「ブースをつくり」「塗料をいっぱい買って」……というようなことはしない。
「いかに最低限の投資で」「いかに100均だけで表現できるか」がテーマだ。
もちろん、今は便利だ。YouTubeで世界中のDIYノウハウ、テクニックを見ることができる。料理なんかも便利だね。
プロの作業をつぶさに見ることができる。ありがとう!
私があなたと違うのは「観察力」だね。ただ、見ているのでなくて「なぜ、こうするのだろう?」って常に考える。で、自分の中で「どうしてこうやるのか」「解」を得る。
そのなかで、相手すら見落としていたり「こうじゃなきゃダメなのだ」と思い込んでいる迷路も見つけ出す。なので、私がエンジニアリングの現場にいると「常にブレークスルー」が起きる。
その瞬間が楽しい。
今回、私は塗装はド素人だ。でも、私の場合「イチからモノを考える」ので、既存のプロ、最高の仕事をしている人たちが「どうして、どうやって、なぜ、こうしているのか?」徹底的に見て、考える。
みなさんも、その私の思考の巨大な宇宙に招待しよう。
まず、クルマの塗装で日本で最高なのは「トヨタのセンチュリー」である。
このボディの鏡面塗装は、トヨタの最上級車のひとつである「クラウン」が4層に加えて、さらに上乗せして塗り重ね7層にしているという。
センチュリーの塗装(エターナルブラック「神威」)
通常のクルマ……「電着」+「中塗り」+「ベースカラー」+「クリア」
センチュリー……「電着」+「中塗り」+「ベースカラー」+「クリア」+「ベースカラー」+「カラークリア」+「トップクリア」
※「カラークリア」はクリア塗料に色が混ぜてあるもの
■なぜ、塗り重ねをするのか?
塗装は「鉄板のボディ」+「サフ(塗料と鉄板をくっつける下地塗装)」+「外で見える色」で十分なはずだ。
でも、実際は「複数の色を塗り重ねて」いることも多い。サフは灰色とかなので、下地に白を塗っても「真っ白にならない」「下が透けて」見えてしまう。
どうしてか?塗装の「膜の厚さがミクロンレベル」だからだ。通常の車の塗装はクラウンで200マイクロメーター(μm)=ミクロン。安いその辺の大衆車なら100マイクロメーターである。1ミリの10分の1ぐらいしか厚さがない。当然「鉛筆の先」でひっかけば簡単に傷がつく。10円チョップなんて悲惨なことになるのは……当たり前だとわかる。それぐらい薄い塗装膜でボディの鉄が錆びるのを防いでいる。
塗装というのは、その「200ミクロン、100ミクロン」の厚さの膜を「作り上げる」技術ということである。
日本ではパールホワイトの色が人気あるようだが、あれも、
「鉄板のボディ」+「サフ(塗料と鉄板をくっつける下地塗装)」+「白色」+「パールホワイトの光る粉とクリアー」で最低でも4層になっている。
シルバーメタリックになると、
「鉄板のボディ」+「サフ(塗料と鉄板をくっつける下地塗装)」+「白色」+「シルバー」+「アルミニウムの粉とクリアー」で5層ぐらいになっているようだ。
シルバー塗装なのに下地には白が塗られているのだ。非常に手間がかかっている。
■自動車のオールペイント(全塗装)をしないほうがいい理由
世間では「全塗装」しちゃえ……と、塗装屋さんに頼む人もいる。趣味で白が嫌だからゴールドにしたい……まあ、かまわないが、実は塗装屋さんのホンネとしては「あんましないほうがいいのに」と思っている。
クルマのリペア、修理をする場合も「ボディのひっかき傷」「へこみ傷」は、「ドア全部塗らないで」「生きている他の塗装の部分は残して」「傷だけなんとかしたほうがいい」とプロは思っている。
でも、実際はドアの傷はドア丸ごと塗装になることが多い。それは傷部分と周囲の色合いがどうしても一緒にならないからだ。人間の視覚をごまかすために周囲も広範囲に犠牲にして塗り直したほうが「みばえ」がいいからだ。
なぜ?メーカー出荷時の塗装を無にした再塗装はしないほうがいいのか?
それは、自動車メーカーの塗装技術が「最高に上手」「堅牢」だからなのである。
一般の塗装屋さんは、自動車メーカーの塗装工程を自前では持てない。やったら、数千万円以上の投資になり破綻する。
それぐらいのレベルの塗装を自動車メーカーではしている。
どういう塗装なのか?BMWの塗装工程を見てみよう。3:38のところから
高性能なロボットアームによって均等にきれいに微粒子の塗料が吹き付けられる。
塗膜の厚さはセンサーでミクロン単位で検査されパスしたら次の工程に進む。
何層もの塗装の後焼き付けといって高温で塗膜を固めている。
トヨタもあるかな。「ドブ漬け」といって塗料のプールにボディごとひたして細部までサビないように塗装している。
ベントレー(イギリスの高級車)の塗装工程。基本することは世界各国同じ
FJクルーザー(トヨタ)の塗装工程 トヨタの塗装は強いと評判である
……こうしたことは、その辺の自動車工場や塗装屋では無理なんだ。
いや、全塗装を売りにしているお店、プロショップはあるけど……やっぱメーカーのパワーには勝てない。
そうやって、生み出されたメーカー出荷時の塗装が「最高」なのであり、DIYでやっていく塗装は「それ以下」になってしまう……特に塗装の耐久度において。
なので、我々が世間の塗装屋さんにクルマの全塗装を頼むと、軽く50万~80万円はかかってしまう。それだけの投資をしても「最初のうちはきれいな」塗装しか実現しない。だったら車を買い直したほうがいい……費用だし。
なので、ボディの傷を塗装する場合「傷のところだけをタッチアップで塗って盛り上げそこだけ研磨してわからないようにする」程度が本来はいい……のだ。へこみは「デントリペア」で逃げるのがコスト面でも再塗装無理しなくてもいいのでベストだとプロも認めている。
私が今回使用している家庭用水性アクリル塗料は数年持たないと言われている。なので、その程度ではあるが、それでもやり方を工夫すれば……いけんじゃないの?という考えで「技法の研究開発」をしてみている。
できたら……ウハウハだね。
以下、私の塗装技術開発の思考と実験を動画にしているので、順次見て行ってほしい。さて、センチュリーのような鏡面塗装が激安素人DIYで実現できるのか?お楽しみに