ドイツのヴァルター=ギーゼキングは私の好きなピアニストの1人である。超天才。彼は楽譜を読んでそのまま難しい曲も弾けてしまう人だった。ドビュッシーやラフマニノフでの彼の演奏はすばらしく、このラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を、渋谷のタワーレコードの視聴コーナーで聴いたとき、脳天をうちのめされたショックを覚えている。
ラフマニノフは自分もピアニストでもあったので、彼の録音も残っていたので聴いたが、作曲家自らよりもギーゼキングの演奏のほうがクリアですばらしい。
そういうこと……えてしてある。
2番について、いまだにギーゼキングの演奏を超えるものを私は聴けていない。
この録音がいいのは、オーケストラがこれまた名指揮者のメンゲルベルグでアムステルダム=コンセンルトヘボウ管弦楽団……という名門オーケストラによる黄金コンビであることだ。
メンゲルベルグのオーケストラもほんとすばらしいので、神様が遺してくれた数珠玉の録音だと思う。
なお、ラフマニノフのピアノ協奏曲は2番と3番で、3番のほうが映画化など好きな人も多いようだが、私は2番がいいと思っている。
なぜなら、ラフマニノフは精神病になって治療を受けたのだが、病んだ心を回復して再起を図ろうと思い立った時にこの2番を書いたからである。ある面死に追い込まれたラフマニノフの命のエネルギーが充填されたがゆえ、とてもいいメロディの曲となった。
ロシアの寒い乾いた大地、そこにあふれる大自然のロマン、ふぶきや風雨に負けない人々の歩み……ロシアらしい旋律だよね。中間部のとぎすまされたようなヴァイオリンの旋律は空気の澄んだ森、小鳥が飛び交う山でキャンプをしているような気分になる。
2021/11/05 2713