武田学校

IQ800の武田校長の頭の中の広大な知的宇宙を一緒に旅するサイト

断熱の話

読者で移住先や、自分の家のリフォーム、新築を考えている人がいるので、私の知見を共有しておきます。

 

■中古住宅でリフォームで断熱する場合

 中古住宅を買って、リフォームで断熱をしたいと思うのは「ほぼ難しい」と思ってください。理由は「家をいったんスケルトンに解体してやり直さないといけない」からです。壁をはがし、天井もはがし、床もはがし断熱材を入れることになるからです。

 そこまでやるリフォームだと「たぶん家一軒と変わらない値段」になってくるので。

技術的にはできますが、あなたの予算感とまるで合わないと思います。

 

■断熱の基本的な考え方

 家を断熱する場合は「6面体の壁すべてを断熱しないと意味がない」と思ってください。

 つまり、「屋根(屋根裏)」「四方の壁」「床」これを全部断熱しないと「ほとんど効果ない」です。一部だけの断熱では意味がないのです。

 

■外断熱と内断熱どちらがいいか?

 欧米では「外断熱」が主流と聞きます。でも、以前みましたがイギリスだったかな。タワーマンションで外断熱の家が火災を起こし「ビルごと」ファイヤーして燃えて大変なことになりました。

www.youtube.com

 日本では内断熱が多いと思います。

どっちがいいか?私の実験では「外断熱」のほうが有利です。最初から外気を外でブロックしたほうが骨材などに熱が当たって発熱しそれを内側の断熱材で断熱するよりいいと思います。ただ結露はどっちみちあると思いますけど。

断熱材は紫外線や野ざらしには弱いので、そういう点では内断熱のほうがいいのかな?

たぶん、どっちこっちになっている気がします。

 

■断熱の落とし穴

 断熱をすることは「トレードオフ」だと思ってください。まず冬は「室内は温かく」なります。でも夏は「外の高熱がシャットされて涼しく」なる……わけではないです。

 「熱がどこからか伝われば」断熱は意味ないです。なので「6面体全部断熱」が必要になります。

 うちでは、自動車の断熱をして実験していますが「思うようにならない」という悩みがあります。というのは、断熱した場合、熱が逆にこもって出れなくなり、外気より室内が高温化するんです。

 なので「排気」「空気循環」が必要になり、この「経路」「送風システム」がいるのです。

 それで、建築家は今の新築の家では「家の中の送風システム」を作るようになっています。壁や床から空気が出るようにして、最上階の屋根裏などから室内の空気を吸い上げて排出したりするようにしています。そのため、24時間電気の換気扇などをつけています。

 中古住宅でこういうシステムを入れるのは「大工事」「できない」ことが多く、結論としては「新築のほうがいいのでは?」という解になるのです。

 

そして、現代の住宅建築で「断熱」することは「結露との戦い」になるのです。これがデメリットです。

「え?壁など断熱材はウレタンなど化学素材だから濡れないのでは?」いえ、室内と外との断熱効果が高いほど「温度差が広がり」冷やされた空気中の水が水滴になって壁の裏の断熱材に「染み出る」わけです。この水を逃がす方法は送風乾燥しかなく、それで建築家は苦労して「空気の経路」をつくるわけです。

 でも、たいていの昭和、平成の住宅では「経路を考えず」「ただ断熱材を貼りこんだ」家が圧倒的に多いので、結露は生じており、これがカビて、カビの胞子が室内に逆流してハウスシックを起こすのです。

 

 つまり、「人間が思うような」「断熱効果」は「常にトレードオフがあり、デメリットをどこまで許容してやるか?」になるのです。

 

 さらに、断熱材は基本「燃えやすい」ので、家に断熱材をわんさか詰めることは「よく燃えてくれる」ことになり、火災面では不利になります。

 

 ホームセンターで、DIYの人が多用する「スタイロフォーム」「発泡スチロール」「ウレタン」はよく燃えますので、せっかくの「燃えにくい無垢材家屋」が「バンバン燃えるキャンプファイヤーの家」にしているわけです。

 こういうポイントを知らず「断熱すればいい」と思い込んでいる人が多いと思います。

 

 時折「巨大物流倉庫」が大火災を起こすのですが、だいたいが「地下の断熱ウレタンに工事のお兄さんのエンジンカッターの火花がうつって燃えだした」ということが多いです。それぐらい断熱材のウレタン素材は燃えやすいんです。

 

 欧米では「ウレタンスプレー」で、泡のようにしたウレタンを壁に吹き付け、効率よく断熱層を作っていますけど、いったん燃えたら燃えやすいわけです。

 

■床断熱をする際の注意

 ということで、部屋の断熱は「簡単なようで難しい技」だと理解したと思います。リフォームでフローリングや台所、脱衣所などを断熱したい人の場合の注意点を教えます。

 それは「床の根太まで断熱材で覆わないと、お金をかけてもまるで効果がない」ということです。

 

 これは、ちゃんとした工務店、職人なら知っているのですが、根太というのは、フローリングを外した時に出てくる「骨の木」です。

根太(ねだ)とは【住宅建築用語の意味】

 インチキ業者はその「骨の間」にだけ、スタイロフォームなどを詰めて「できました」とするのです。※ちなみに上記のURLの写真の床断熱材の入れ方は「NG」パターンです。

 でも、それではダメで「骨も丸ごとくるんで」「床全部が覆われている」状態でフローリングを載せないとダメです。

見てびっくりしたのですが、たいていの工務店施工は「インチキ床断熱」になっています。DIYのこの方の床断熱材の貼り方が正解です。プロが何やってんだろね(笑)

minebuild.jp

床全面に断熱材が貼られているので「根太から熱が逃げること」がないわけです。

 この部分は、できたら見えないので施工前に業者に「どういう断熱の仕方をするか?」図解入りで説明してもらうといいです。

 あるいは、過去の施工写真を見せてもらうとわかります。

 

■壁だけを断熱してもダメな話

 さらに、住宅の場合「もっとも熱が出るのはガラス窓」「サッシ」です。なので、「アルミサッシの家は、樹脂サッシに変更し」「ガラスは3重真空ガラス」に変えないと……意味がないです。ところがそれが簡単にできないのです。

 

■中古住宅が断熱工事しづらい理由

 たいていの人は「窓やドアは後から自由に変えられる」と思っているでしょう。実はできないんです。

「え?お金あるから、うちの家、アルミサッシ全部樹脂サッシに変えたい」

簡単に見えて「とてつもなく大変」な工事になるのです。

というのは、家というのは、新築時に「窓枠」「ドア」は「もう変えられない」というレベルで家自体に固定されるんです。

「部品交換でチューンアップ」の「バンパー交換」「ホイール交換」みたいな「カーアクセサリー」みたいなことができないんです。

一度建てた家の、窓枠を交換するには家を破壊して行うことになり、できないことがほとんどです。

同様に、玄関ドアも同じで「ドア枠から交換」って、結果として強固に埋め込まれたドア枠を破壊して入れ直すのですが……ほぼ難しく、それで「中古住宅の玄関ドア交換」は「上からかぶせて」施工することが多いぐらいです。

 

たかが、窓、たかがドア……ではないということです。

なので、新築する際「窓」「ドア」は将来変えられないことを考えたうえで、きちんとしたもの、デザインも満足するものを入れないと大変なので選ぶ際は一番神経を使った方がいいです。

 

あなたが思っているほど、断熱工事って……甘くないんですよ。

ということで。読者の方は間違いが起きないよう願います。