古代の縄文人が暮らしていた「縄文式竪穴住居」……原始人……とバカにしていたら大間違い。この竪穴住居は極めて科学的・合理的・エコな住宅建築である。
ポイントとしては
1.地面に深さ50㎝~1mの穴を掘る
2.木の柱を5本ぐらい建てる
3.柱と柱の間に木をおいて梁(はり)にするが、この梁を支える木は「二股の木」を柱にして使っていた。
4.周囲にイネ科の「カヤ」を積み上げて屋根・壁にした。
5.さらに家の周囲から屋根の途中まで土をかぶせた。
6.家の周りは土で盛り上げ、雨水が中に入らないようにした。
7.屋根には穴があり、家の中心ではたき火・囲炉裏があった。
8.冬は暖かく、夏は涼しかった
……どうだろうか。
1.のポイントは「地面の上にいるより、地下のほうが温度差がない」という自然の仕組みをうまく利用している。現代人は土の上に家を床を上げて建てるので実質風に吹きさらされるが、竪穴で半地下だと楽なのである。どれぐらい掘ればいいかだが1m掘れば地中は冬でも17度ぐらいの気温なのだという。マイナスや10度以下ではないのだ。だから楽に暮らせる。
そういう知恵を縄文人は知っていた。東北の古民家では人は床でなく「土間」にむしろをひいて寝ていたという。土に寝ていた方が温かったということである。
ニワトリも地面を掘り下げ、そこにずっと座っていることが多い。野生のハムスターは地中に穴を掘って地下にトンネル形式の家をつくる。どうぶつは地温が住みやすいことを肌で知っているのである。
※鳥は「風に身体が吹かれ続けると死んでしまう」。羽毛で包まれた鳥でも暴風の中にずっといたら体温を奪われ死にやすい。なので「雨風をよける」巣を作っているわけである。
3.は自分で木組み部分つくらず、自然の二股の木を利用しており頭がいい
4.草のカヤで屋根にしてなぜ「濡れない」のか。実は最近の研究で「分厚く積まれたカヤなどは、表に大雨の水は流れるが、その奥までは浸透しない」という「毛細管現象」がうまく利用されていることがわかった。なので、本来なら濡れる天然素材のカヤでも茎を束ねたワラにして厚く盛れば逆に防水効果を得られるのである。なので、茅葺の屋根は「分厚い」のである。
5.によってワラで囲んだ家にさらに土を盛ると「断熱効果がちゃんとある」のだ。
6.で、大雨でも水は家には入らないようにされており、これで半地下の住居が快適に暮らせた。
7.ワラでできた家の中でなぜ、たき火をしてだいじょうぶだったのか?実は白川郷の家などは天井がやたら高いことがわかるが、日本の古民家は土間でかまどがあって煮炊きをしてきた。たき火は3m上になると「火の粉が消える」ので「火事にならない」のだ。だから、天井高2.5mの空間(今の住宅の居室の高さと変わらない)を確保し床下50㎝の地中分あわせれば、おのずと家の真ん中と「頂点」までは3m近くなり火の粉で家が燃えることはなかった。そこまで科学的に考えられていたのである。
竪穴住居は「50㎝プラス円錐形」なのでこれで3m近い高さを確保していた。また、内部のたき火で発生する「すす」が建物壁面につくことで「防虫」にもなっていたのだ。まさにエコなシステムを効率的に組み合わせた家だった。
さらに円錐形の家は「構造上も強固」であるし、主の柱のまわりに「相互に木をかませる」つくりは、実は建築学上も「木の棒だけで強固な橋を作り上げる」「ダ=ヴィンチの橋」の技術そのものである。
ということで、これらは、近代的な住宅を建てる場合も実は利用できる。欧米では「半地下の家」をデザインするエコ指向の建築家が出ている。
われわれ現代人は古代人をバカにしているが、ダメだ。古代人は命がけで天文観測と自然現象に向かい、肌で実測で経験値を得て、その上での思考や実験の繰り返しでパーフェクトな竪穴住居を完成させて運用してきた。
その知見をリスペクトして生かすべきであろう。