巣ごもりの間、大林宜彦の映画をずっと観ています。心の遠赤外線。
「この空の花 -長岡花火物語」を観ました。
160分もの長時間なので、ダレるかなと思ったら、観ちゃうんですよね。
大林さんの映画はU-NEXTの動画配信で気軽に見れます。この映画は11月まで配信するようです。
大林さんの映画って、非常に「ゆるい」展開がのっけから続くので「だいじょうぶかー」と思い出すんだけど、そこが違っていて、途中から加速しだして「人生の素敵なメモリー」を観る人に刻み付けるんですよね。
いつも見ていて、ショットがよくて、画がいいんです。今まで「尾道三部作」とか、アイドル系のファンタジー映画が多かったけど、大林さん社会派の映画もよくやっていて、「彼はCMでも映画でもなんでも上手だった」というのはウソじゃないと。
この映画は、長岡市。私は新潟県はけっこう行ったんです。佐藤先生の弟子の目黒さんに連れられて新潟あちこち回りました。
新潟で名士だけで集まって個人的に勉強会して、その際に長岡市の図書館の館長をお呼びして「米百俵」「河合継之助」のことを話してもらったので、覚えているんです。
あと、長岡というと山本五十六の出身地ですね。なかなか優秀な所なんです。
でも、今回大林さんの映画で「長岡空襲」のひどさを初めて知りました。
また、長崎の投下された米軍の原爆「ファットマン」の模擬爆弾も長岡で練習に使われてそれでも死んだ人がいたことも初めて知りました。新潟が原爆投下の候補地だったと。
「長岡の花火大会は絶対みろよ。日本一だから」
と花火大会観ましたね。河川敷で見上げる天空にスターマインがおしみもなくすごい数広がってすごかったな。
他の地区の花火大会のレベルではなかったです。
でも、あの花火大会は実は、長岡空襲で死んだ多数の市民の「慰霊」「鎮魂」のためにやっているのだということを知って、胸が熱くなりました。
ただの花火大会ではないのですね。
映画を観終わるころ、私には、あの花火が「ヒューン」って打ちあがっていくのが「人のたましい」に見えたのです。
なるほどね。
で、この映画の中で大林さんは
「まだ戦争には間に合う」
という題名の舞台を劇中劇でやります。
この言葉の意味ですけど
「これから起きる戦争に、あなたはそれを止めるため行動しなさい」
ということだと思います。
「過去のことではなく、未来の戦争を、未来に生きるあなた方は止めなければ」
大林さんはこの映画でそれを言いたかった。
すごいですね。大林さん、毎度映画で「人生とは……」って押し付けるのでなく「ボソッと」語るのです。
彼は、映画監督と言うより「マルチな文芸作家」だったと思うんです。
ピアノやクラシック音楽も大好きだったようですし、文芸も得意ですね。その総合的な表現が映画だったんだな……と。
でも、私は大林さんのことは「アイドル映画の監督かな」で今年になるまで興味なかったのですよ。昨年お亡くなりになった。
でも、もっと前に会って、芸術やいろいろなお話をしたかったなと思いました。自分にとってはこういう方と話していると一回で大学の1つ分の教養を得られるのです。
でも、彼が遺した作品を観るだけでも、心の栄養になります。
そういう大林さんの遺したことばで、いいのがあります。
「今の時代の危険は、全てが他人事になってしまったこと」
「命というのは人間だけだと思うんだけど、世界中みんな命じゃないかと」
「(ガンを患って以降)地球のためにどう優しくすればいいかっていうことを考えて生きようと、自然にそう思えてきてね。そうするとありがたいことに、全てのものが命に見えるんですよ」
「戦争という犯罪に立ち向かうには、戦争という凶器に立ち向かうには、正義なんかでは追いつきません。人間の正気です。正しい気持ち。人間が本来自由に平和で健やかで、愛するものとともに自分の人生を歩みたいということがちゃんと守れることが正気の世界です」
「競争社会の中にある限りは、突き詰めると戦争になっちゃう」
「政治家も経済家も、芸術家のように生きてほしい。それこそが、痛みを知っている敗戦国民の生き方だろうと思う」
「映画というのはそうだなあ、「傷つきあって、許し合って、愛を覚える。」というのが、あらゆる映画のテーマでしょうかね」
鋭いですね。大林さんは映画もそうなんだけど、短いフレーズのなかにグサッと人生の本質を入れますね。
こっちでもいい事いってます。
「人間は生まれる時代も、場所も、自分で選ぶわけにはいきません。いつ、どこにいてもそこで幸福になれないようでは駄目です。」
「他人のように上手くやろうと思わないで、自分らしく失敗しなさい。」
「世の中はいつの時代も矛盾に満ちています。
特に若い人たちは矛盾に敏感ですが、そこから逃げてはいけません。
その矛盾に立ち向かってこそ、自分の人生を作ることができるんです。」
「夫婦であっても、プライドを傷つけることは言ってはいけない。
たとえ彼女が言ったことにムカッときても、言い返したらおしまい。
話しているうちに自然に納得できると、スポーツをした後のような快感を味わえる。
それが賢く生きるということ。
賢さは訓練です。」
「幸福に生きる秘訣は、自分のいちばん好きなことをして生きる、ということに尽きる。」
「無くしてはじめて、私たちは当たり前の幸福に気づかされる。」
「ひとは、
ありがとうの数だけかしこくなり、
ごめんなさいの数だけうつくしくなり、
さようならの数だけ愛を知る。」