大林宜彦映画を毎週見るようになって、もうU-NEXTはかなり観た。あとは180分近い大作が残っている。夜短い時間で観れるのないかな?と90分の「彼のオートバイ、彼女の島」を何気なく見た。
この映画、小さいころCMでちらっと流れた程度でしか見ていない。だから何も知らず先入観もなく見た。
でも、この映画、大林監督のその後の映画の「伏線」「予言」的な内容がいっぱい入っていた。
「尾道・瀬戸内のロケ」「でっかい材木トラック」「前振りもへったくれもなく、突然現れるヒロイン少女」「ショパンの音楽」
それで、また、観た人からは「駄作」「原作と違う」とボロクソなんだが……私的には「えー、いいじゃん」だった。
大林監督、ふざけて映画つくったほうが……かえっておもろい。
これもオートバイの走行シーン、案外迫力があって見ごたえがある。
それに、キャストが意外としまっていて、三浦友和出てるし。
主役の竹内力、きれいな顔して肉体美のいい男だよな。今の「ミナミの帝王」の姿とは1万倍違いすぎる!そして、彼女になる原田貴和子は原田知世のお姉さんだよ。姉妹で売れっ子女優だった。でも前彼女役の渡辺典子のほうがもったいない美人だと思ったけどね(笑)
これ、暴走族より前のカミナリ族とかかな?あんまわからんが、ビーバップのワルまではないし、適度に青春なオートバイ乗りだよね。
この時代と、今の令和の若者の恋愛ではかなり違うよね。LINEで出会いととかじゃなくて、手紙で文通……。
でも、なんか明るいよね。最近はバイクのる子も減ったしね。
けれど、バイクは危ないから乗らないほうがいいよ。やっぱ事故率高すぎ。
映画でもそうだし。
大林映画でおなじみの入江若葉……どこで出てるのかな?と思ったらヒロインの少女の実家の死んだ母親の遺影??
瀬戸内の島の盆踊り。竹内力が彼女に会うためにバイクで突っ走っていく。
いいねえ。元気だね。
二人でツーリングするけど、どんどん上達する彼女に、バイク仲間の先輩が「あんなに上達が早いと死ぬよ」って予言する。
そして、最後死んじゃうんだけど。
大林さんの映画って、意図的にモノクロで映したり、カラーにしたりで場面展開がある。
それって意味があるんだけどね。
今回は、彼女との楽しいシーンがほとんどがモノクロ。でも、時折カラーになる。
そして、最後彼女がバイクで壮絶な事故死をして、それも「ふたり」で姉が死んだ原因の「材木トラック」に激突。そこでカラーで彼女の死体がリアルに描きすぎ……うわーっ。ホラーだ。
大林さん、ホラー映画は「HOUSE」だけだと言っているようだが、こうしてみてくると実は「うそでしょ。大林さんの映画全部ホラーじゃん」って私でも気が付いた。
だって、あの世の人が出てきたり、それとの交流。
で、この映画で彼女が事故死したのに、最後、なぜか彼女が元気で待ち合わせ場所について彼が仰天して、ふたりでツーショットでカラーで写真を撮るシーンで終わるんだよ。
それって?どういうこと?死んだんならモノクロじゃないの?
ラストは突然終わるので「えー、どういうこと」って叫んじゃったよ。
それで、なぜラストのシーンがカラーになったのか?
考えてしまった。
それで、私なりの解なのだが、この映画はもともと全編が彼のメモリーの回想なんだ。
それがモノクロ。
ところが思い出を終えて、現実の社会にもどった今が「カラー」。でも、最後のシーンでカラーで死んだ彼女とツーショットを撮るのは「今でも彼女は俺の心の中に生きている」という彼の孤独な気持ち。
なんか、切ないね。でも、元彼女の渡辺典子を捨てて、無理して好きだからで……一緒になった彼女も最後は死んじまった。
この竹内力の演じる「コオ」……なんか、それなら渡辺典子と結婚していた方がよかったんじゃないの……って思うんだよね。
それで、この二人の顛末を見ていたら、眞子と小室圭も同じだよな……と思っちゃったよ。
ムリして駆け落ちしてラブ……って、俺の知っている範囲でも……あとよくなった人……いないんだよな。
でも、世間の人間は無責任だから「よかったね」って言っちゃうだろ?それが人生のトラップなんだよ(笑)
だって、そいつら自分の結婚でもないし、無責任なんだから、いくらでもいいこというのさ。
やっぱ、本人はその時は「こうなんだ」って思い込んでいるけど、10年、20年してみな。相手も年取るし、魅力も失せるし……その時、剥がれ落ちていく現実を前にしたら「やっぱ、親や周囲がすすめたあの人が良かったな」と思う時がくるんだよね。
ま、そういうことを感じさせた……ホラー青春映画でした。