大林宜彦さん、人生後半は反戦映画多かったね。意外だったね。まあ、芸術家だし戦後生まれの人、大部分は戦争のない世界を願うからね。左翼運動もさかんだったし、当然といえば当然か。
それで、いずれも120分超える180分近い大作が多い。けど、やっぱ観ちゃうよね。大林さんの映画、長いはずなのに「これぐらい時間いるかな」って。やっぱそうなる。
だから、監督は時短したくなかったんだろうね。自分が作りたいようにつくる……自主制作のポリシーなのかな。
この作品は、戦時中北海道の樺太(現在のロシア)にいた、医師が老齢で死ぬところから始まる。
集まった遺族、寺の法要……大林監督の映画は必ず「神社の鳥居」「墓」「寺」が出る。彼はやっぱりクリスチャンでなく、神道・仏教の日本人なんだね。
でも、インテリアは和洋折衷のおしゃれな感じだ。まあ、この人、何でもできる教養人でインテリだよ。
あと、長岡の映画でも魅力的な美人だった、原田夏希、猪股南が出ている。ふたりともいい感じだったが、その後消えちゃったのでもったいない。
いつも思うんだけど、大林監督はその女性が歩く後ろ姿……これがすごくいい女に見えるのと、顔アップで撮るときがすごく上手なんだよね。
安達祐実をいい女性に撮ったのこの映画ぐらいじゃないかな?
ショットや、服装がいいよね。
自分、彼女が12歳の時、間近で見たことがあったのでこの映画観て
「ずいぶんいい女性になれたな。よかったな」
と思ったよ。売れっ子子役の後はプライベートはけっこうかわいそうだったんで。
いまどき、こういう女性……少ないよな。清楚なお嬢さん
それにしても、樺太の病院にいた看護婦らがソ連軍の条約破棄に伴う侵攻で、捕虜になることを恐れ一同青酸カリを飲んで自決するという……ショッキングな内容。
この当時は、今の日本国民には信じられないけど、命は軽かったね。恐ろしいほど。
愛する彼女を現地で失い、北海道の芦別で医院をして暮らした晩年。
一人の青年医師の一生を通して戦争の悲惨さ、大林監督の反戦への想いが流れる。
今回も途中まで長くなんかぼんやり続く動きを何気なく見ていて、最後「うっ」とくる。それが大林監督の映画のだいご味だね。
そして、観終わったあとも、何日もそのシーンやショットが頭のなかにこだましていく。
残る映画なんだよ。
ちなみに「なななのか」って意味わからなかったけど「七七日」で「四十九日」のこと。仏教だね。
この映画で流れるテーマは「誰かの生は、誰かの死のおかげ」
けっこう重たいね。そうだな。
だからこそ、今生きる人たちは、自分たちの命を大事にしないとね。