■電子レンジはNG
世間の車中泊動画、キャンピングカー動画では「電子レンジ」をあこがれの装備にしている。
私も最初はそう考えた。だが、実際に運用すると「ダメだ」となった。
というのは、電子レンジは700Wと表示された非力なレベルでも、実際の電力は1000Wを超えている。
車中泊車では「サブバッテリー」を用意して、正弦波インバーターで家電を使うのだが、その機種も家庭用コンセントの限界1500W未満にする。
理論上は1000Wでも1200Wでも使えるが、実際にシステムを組むと分かるが「とてつもない大電流で回路が焼ける」1000W級の大電流を使うには38sq(スケア)のぶっとい電線を使う必要がありこれが値段も高いし使いづらい。
短時間、数分ならいいけど、10分、20分……アホみたいに回していたら加熱の危険、それだけでなく電力もバカみたいに使ってしまう。
問題は、家庭の電気なら当たり前だけど、災害時、発電量も少ないソーラーバッテリーでの日常的な運用では「やめたほうがいい」ことになる。
大量の電気を使って、水を沸かすだけ?仕事能力として低い。
■炊飯器がいい理由
それで、私は電子レンジがなくても低電力で調理できる方法を考えた。ニクロム線のヒーターによるフライパン調理は同じく愚の骨頂。
トースターでもある程度はできるが、小さい。
そしてたどりついたのは「炊飯器」しかも、「500W以下で動作する低電力なもの」だった。
それを実現して、多機能な機種はこれだった。4合炊きで400W以下で動作する。
この機種のいいのは「ヨーグルト発酵」モードを持っていることである。いらない?実はこの発酵モードは大事で、30℃前後のゆるい温度で長時間、小麦粉などの生地を温めることができる。ヨーグルトだけでなく「発酵」に使える。
これは大事で。炊飯器でイーストや、自作天然酵母でパンを焼くことができるわけだ。
一人用なら、小さいこの機種がいい。小さくて軽いのでリュックサックに入る。ポータブル電源でも動く230W(最大)程度の電力消費。だが、この機種もヨーグルト発酵モードを持っており、発酵作業ができる。
ヨーグルト発酵機能というのは「30℃前後の温かさで長時間保温できる」ことであり、ヨーグルトやパン生地の発酵などあらゆる長時間保温に使うことができる。なので炊飯器を選ぶときはこの「ヨーグルト発酵機能」をぜひ搭載した機種にしておいてほしい。あとあと便利さがわかってくる。
こうした炊飯器で私はこれまで、日常生活で食べるほとんどの料理を作ることができることを実証してきた。武田学校の以下の動画群で公開しているので見てほしい。
ご飯を炊くのはもちろん、牛肉ステーキやハンバーグすら焼けるし、フライや唐揚げを揚げたり、フライドポテトすら作れた。
ホットケーキも焼けるし、炊飯器でパンも焼ける。スクランブルエッグ、卵焼き、さらにはスパゲッティを水からゆでて短時間・効率よく・少ない水でおいしくつくることもできる。
餃子も焼ける。スープも作れる。煮物、炒め物、しゃぶしゃぶも問題なくできた。
つまり……和洋中、何でも作れる。レトルト食品も中を出してそのまま温められるし、ラーメンも作ることができる。コーヒーやスープを入れるお湯も沸かせる。
いずれも低電力で作れ、ソーラーバッテリーの発電だけで遂行できる。
1.5合のミニ炊飯器で1回の調理で使う電力は100~200Wh(8~16Ah)程度であり、ソーラーバッテリーで自立して発電して使い続けることが可能な水準である。
なので電子レンジはいらないことがわかり、電子レンジを撤去した。
電子レンジは重さが10キロ近くあり大きさもとるが、炊飯器は軽くスポーツバッグに4つぐらいでも入ってしまう。値段も安い。
複数の炊飯器をもつことで「ご飯とおかず」を並行して作ったり2~4人分ぐらいの料理を作ることも可能になった。
なので、ベストな家電は「400W以下で動作する炊飯器」なのである。
うちでは、4合炊き炊飯器を2台、1.5合炊き炊飯器も2台、計4台の炊飯器を装備して日々の調理に備えている。
■ホームベーカリーが実は役立つ
災害機動司令車ミーブ号にはホームベーカリーも搭載している。これで小麦粉と自作天然酵母、わずかの砂糖と塩、水だけで「おいしいフランス風の食パン」を作ることができる。
私の災害時の食料備蓄の方針は「加工食品でなく、基本食材、調味料の組み合わせで多様な食事を毎日継続して作り続ける体制」を確立することだった。
普段の生活と変わらないメニュー、栄養価、量を実現し、長期間のサバイバル生活でも貧相でモチベーションが下がるまずい料理でなく、おいしくて、お店やプロと変わらないクオリティ。飽きない豊富なメニューを実現することだった。
長い災害サバイバル生活で食事は健康とモチベーションを維持するために必要である。
軍隊も陸軍は兵士に大量のカロリーと質の高いミリタリー食を出すことに苦心している。兵士の士気、戦争の勝敗に直結するからである。
それだけ大事なのが「水と食料」である。ロシア軍では1日3万食のおいしい小麦パンを製造する「パン製造車」を同行して戦争をしている。
なので、まさか災害時にパンを焼く……という発想は誰もしてこなかったのだが、私はそれをクリアした。
家庭用のホームベーカリーをテストした結果、自作天然酵母は半永久的に作り続けることができ市販のイースト菌がなくても独立してパン作りができることがわかった。
そして、ホームベーカリーは炊飯器と同様に500W以下でパンを焼く高温調理ができ、ソーラーバッテリーで運用できるすばらしい家電だということが判明した。
実際、パン作りに必要な小麦粉を「こねる」「発酵させる」「焼き上げる」作業……ホームベーカリーはすべて全自動で手を汚すことなく、しろうとでも材料さえ量って投入さえすれば作ってくれる。
製造中は機械に作業を任せておけるので自分の時間を自由に使える。このこともすごく大事だ。もし、たき火や釜、カセットコンロの火で調理したら火の番がいる。つきっきりになる。火災のリスクもある。
だが、ホームベーカリーは車内で使用しても機械内で高温が隔離されるため安心して調理を任せることができるのだ。
寝ている間に発酵させ、朝方に焼き上げてパンを食べることも可能になった。使用する水はわずか160ml程度であり、災害時貴重なコップ1杯の少量の飲料水で調理することができる。シンプルで合理的で洗練された災害食を作ることができる。
レトルトカレー、インスタントラーメンを温めて作るのに400ml以上の「捨て水」が必要となることを考えると……いかに効率的か……わかると思う。
■自作天然酵母による運用に適した機種を選ぶ
それで、通常のパナソニックなどのホームベーカリーは「すべて全自動」がゆえに、発酵時間が決まってしまう。
自作天然酵母は6~8時間、季節によっては10時間ぐらいの発酵時間を要する。それができない。
なので「ねり」「発酵」「焼き」が自分でマニュアルで行える機種がいいわけである。
それができるのがMK精工のホームベーカリーHBKシリーズである。
シロカでもできるようだが、当方では企業の永続信頼性でMK精工に選定した。この機種は大きさも炊飯器より背が少し高い程度でコンパクトな上に、ねり、長時間発酵、焼きを別々に操作できるので大変便利である。
(1)まず、天然酵母と砂糖・塩・水・小麦粉を容器に入れ生地をねりで練らせ混ぜたあと、「天然酵母モードの生種づくり」で最大24時間の発酵時間を使って生地を5~7時間発酵させる。
(2)生地が容器内で半分以上膨らんだところで焼きを35分~40分で設定して焼けば天然酵母パンが出来上がる。
うちでは、ヤフオクで安く同型機種を複数購入し、同じ部品(中釜や羽)が共有できるようにして「壊れても代替機で継続できる」体制をとっている。
電力消費はパンを焼くときで380W程度であり、高温になるわりには低電力である。
パンのこねから、発酵、焼き上げまでのトータル消費電力も290Wh(=24Ah)程度であり、ポータブル電源でも容量がある機種なら運用可能なレベルとなっている。
1回のパン焼きで300グラムの小麦粉で市販の4枚切りで3枚分ぐらいの量のパンを焼くことができる。十分なカロリーになる。日々の朝食分のパンなら1日おきに焼くことで2枚ずつ食べながら2人分回していけるわけである。3人でも毎日。
さらに、ホームベーカリーには「ジャム」を作る機能もあり、煮込み料理をつくったり、保存食を作ることも可能である。
災害時、調理スキルがない人でも、炊飯器、ホームベーカリーは「材料さえ入れれば、自動的に料理が出来上がる」お手軽さ。野外や復旧作業などで手が汚れていても操作できる。
なのでまさに災害サバイバル生活に向いたマシンなのである。
うちでは、天然酵母を果物など(リンゴ、イースト、ビール、ヨーグルト)から自作して世代培養を繰り返して2年間ホームベーカリーで自作天然酵母パンを食べ続けている。ドライイーストを外部から購入する必要はない。
市販のパンを買うことはなくなりコストも安い。なぜなら、小麦粉の値段だけでできてしまうからだ。余計な油もいらず、ノンオイルで小麦粉の味わいがおいしい天然酵母パンを食べている。
なので、災害サバイバル生活での知恵、ノウハウは、一人暮らし、調理ノウハウがない、忙しい人の普段の生活でも「低コストで、効率よく、栄養価の高いおいしい手作り料理」が食べられる世界を実現するのである。
私のポリシーは「普段の生活スタイルと災害サバイバル生活のシームレスな運用」である。災害サバイバルだから質を落とすのでなく、普段と同等の世界を実現して、豊かな生活を続けられるようにすることだ。